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何故私は大好きだった音楽業界に絶望を憶えるのか? [独り言]

何故私は大好きだった音楽業界に絶望を憶えるのか?

私の心の奥底では今でも音楽の魔法を信じている。
小中高時代に音楽がかけてくれた魔法の記憶と体感はかけがえのないものだ。
私の時代を彩ってくれた音楽は、今でも私の宝物だ。
私の一世代上の団塊の世代に生まれた超優秀なミュージシャンたちのお蔭もあり
私は恵まれたポピュラー&ロック音楽の進化過程を体感できた。
加えて78回転アナログ盤→LP&EPアナログ盤→CD→配信、またアナログ録音→デジタル録音という
技術的変遷も同時に体感し、絶え間ない変化と革新の過程にあった大衆音楽は、まさに時代を作った「メディア」そのものだった。

だから社会人になり、音楽に関わる仕事がしたくて音楽業界に潜り込んだ。
約19年、その場所にいた。そして一度その場所を離れた。
それから約14年を経て、まだ音楽業界に戻ってきた。

随分と景色が変わってしまった。

残念ではあるが、音楽業界にはかつてのような熱気や活気がなくなってしまった。
もちろん、今でもライブビジネスを中心に活気のある音楽活動やアーティストは存在する。
しかし、ネットによる情報過剰の時代と趣味嗜好が多様化の時代になり
音楽そのものが世の中を動かすパワーを相対的に削がれてしまったことは
時代の趨勢とは言え慙愧の念を禁じ得ない。
また人間がいい曲だと感じられる音の順列組み合わせはほぼ出尽くした感があり、音楽そのものに新鮮さを憶えるのは難しくなったこともある。残っているのはアーティストの人間力だけだろう。
しかし昨今のライブ事情を冷静に俯瞰すると、口パクライブを平気でやっていても1万円近く取って平気って感じだ。
もちろん歌は口パクだが演出、ダンスが凄いという人もいるだろう。
価値観の違いと言えばそれまでだが、だったら潔くマイクなんて付けない方がいいだろう。
そういう意味で私は古い価値観なのかもしれない。

現代の音楽業界は、時代の波に晒されてビジネスモデルを大きく変えざるを得ない様相だ。
しかし特にレコード会社の人たちと話していると、大半の人たちがかつての栄光を忘れられないのか、あるいはまだ自分たちの過去のモデルが通用すると思っているのか、相変わらずCDを売る事にしかエネルギーを注いでいないようだ。

明らかにCDが売れない時代になってもう15年以上。

ここ最近はAKB商法なんていう言葉も出るような時代で、CDそのものよりもオマケの価値が高く、
無理矢理CDを販売している時代であるにも関わらず、レコード会社の方々はCDを売る事に熱中している。
彼らは「音楽」よりも「モノ」を売る事が使命になっているかのようだ。
私はとあるレコード会社の会議で腰を抜かす発言を聴いた。
とあるグループのCD販促でメンバーとの2ショットやハグ、握手会、サイン会を行い、その中で、ファンの一人が700万円もCDに費やしたという情報があった。
私は、レコードメーカーの人間として、そういう事実をユーザーに対して心苦しさを感じないですか?と尋ねたら、「それはユーザーが選んでいることですから関係ないですね」と返されたのだ。
その時私は、私の知っている音楽業界はとっくに終わっていたんだな、と確信した。
700万円も買わせる土壌を作ったのは一体誰なんだ?という事に何の痛みもなく、売れればいいという幼稚な経済論理を正当化する連中が今のレコードメーカーの平均的なレベルなのだろう。
そいつは50代なのにだ。いや、50代だからかもしれない。
CDを700万円も買った人間が本当の意味で幸せだったのか? 考えた事がないんだろう。
50代のそのレコードマンは、自分の居場所が確保できればそれで良いだけなのだろう。
メーカーからすれば、2ショットやハグ、握手会、サイン会で対価を得ているという論理だし、社員の給料も払えるってことだ。
レコードメーカーは、いつからタチの悪いホストクラブのオーナーのようになったのだろう?

こんな体たらくだから、最近のレコード会社には若手のスタッフが圧倒的に少ない。それも無理もないことで、Googleとフジテレビから内定をもらった若者は迷わずGoogleを選ぶ時代なのだ。若い人たちにとってレコード会社が今後30~40年、自分たちのキャリアを支え豊かにする産業とはとても見えないのは当たり前なんだろう。エイベックスですら、レコード部門はライブエンタ部門の中に包括される時代なのだ。
私はレコード制作が大好きだが、もう時代的にそれが重要な仕事でないこと位は受け止めている。
従って若手スタッフの流動性が下がる。それは古株、つまり栄光の時代を知った古手のスタッフが保守的に経営をしている組織であり、新陳代謝や新しい発想で今後のレコード会社を運営しようという体質からほど遠いということだ。
レコード会社は過去25年余り、ビジネスモデルを見直す機会が多くあった。
多くのレコード会社がそれに着手できていないのは過去が余りにも良すぎたのかもしれない。
いずれにしても社会からの役割は終わりつつある。 終わればいいとおもう。現代において、レコードを作ることや売ることはレコードメーカーの専売特許じゃないからだ。それに気が付いていないふりをして、未だに銀座や六本木のキャバクラでテレビ局などの連中を接待しているのはかなりの時代錯誤だろう。IT系企業に敵うはずもない。

私の時代、レコード会社は、時代の最先端を行っており、最も憧れていた職種の最高峰だった。
それが40年程度の間にここまでみすぼらしくなるとは、失望を通り越して絶望に近い印象だ。

エイベックスのような新興レーベルは、こうした時代の波を先読みして早期の業態転換を図っているが、
そういう彼らでもあと20年という時間を見据えると生き残れるかどうかは私にも分からない。
既に音楽部門は、ライブエンタ部門に吸収されており、会社の中での重要度は下落してしまっている。
ましてや古株のレーベルは業態転換を図ろうとする施策さえ見えてこない。
最近はレコード会社も360度ビジネスをやろうとしているが、そもそもレーベル社員にそのスキルがあるかどうかすら疑問だし、実際はM&Aでもしない限り無理だろう。
同じ業界には既存のマネージメント会社も多数あり、ビジネス上の衝突を回避できなくなれば、レコード会社の存在は増々不利に働かざるを得ない。
ソニーミュージック辺りの稼ぎ頭は、実はアニメをやっている「アニプレックス」だったりする。なんせ売上1000億円で営業利益が250億円(2016年度)にもなるのだ。アーティスト部門も頑張っているように見えるが、実態はそこにない。
残念だが、現代の音楽業界において、ロックは衰退し、ポップミュージックはアイドルかK-POP+ダンスミュージックで、覇者はアニメ関係というところだ。
昨今の音楽業界では、マネージメント会社の方が圧倒的に優位で、レコード会社の幹部が、マネージメント会社の役員に天下り出来れば最高のキャリアアップとさえ言われている。レコード会社は絶滅寸前の恐竜のような存在になろうとしているようだ。アメリカの先端を言う音楽シーンでは、ミュージシャンがレコード会社を排除するのがトレンドなのだ。
今のミュージシャンは、メーカーがなくても音楽を作る事出来、流通も出来、宣伝もネット経由で十分とも言え、ライブに至ってメーカーなど全く不要だ。現代の音楽業界において、レコード会社の役割は無きに等しいというのが事実なのだ。

とあるレコード会社の人からは、「今でも音楽業界の中心はレコード会社なんです!」と聞いたことがある。
まるで敗戦真近の日本軍のような連中だな・・と思った。
本当にそうであるなら、現代の多様性が全くない年間オリコンチャートは彼らの意思表明なのだろう。

昨今はヒットチャートに関係のないところで有力な活動をしているミュージシャンが多い。
一般的には無名だがツイキャスでは大人気のミュージシャンが両国国技館を満員にしてさえいる時代になったのだ。
また、オリコンには全く登場しないバンドでも1万人規模の集客をするような連中だっている。

彼らの名前を教えられても私には全く分からない。しかしこの集客力は凄い。そして、これが事実なのだ。

昔のようにテレビ雑誌で全国区的な名声を得て影響力を作る時代は終わったようだ。
一般的には無名でもニッチなファンに深く突き刺さるミュージシャンが時代を作っているともいえる。
現代的なサブカルとも言える世界で生息するミュージシャンたちが、メジャーを超え始め違う音楽進化を遂げ始めている。 

そういう意味では、私も保守的な古株なのだろう。
私の時代もそうだったが、新しい文化は若い世代が作り出すものなのだ。

もうオジサンの出る幕はない。

私が戸惑っているのは、それを目の前で見せつけられ、自分の方程式では解を得られなくなっているからだろう。
また同じような古株連中が、若い連中に負けないぞ・・!と息巻いて解を持つ力もないのに頑張っているからかもしれない。
スティングやオールマンブラザースを知らなくたってどうってことのない時代の若者が文化の中心なのだ。

そういう意味で、私は若い人たちに任せるという選択をした。
私ができるのは応援することだけだから。
そして私は自分を彩ってくれた音楽をひたすら愛しむ。まだ聞いた事のない曲なんて数万曲あるし。それで十分だ。
昔のレコード会社や音楽業界人に多大なる感謝をしながら生きて行こう。







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